異臭
朝、携帯電話でしゃべるおっさんの大声でうっすら夢から覚めると、異臭。
そら豆+納豆。 
くさい。
体を起こして仲間にも確認。 やっぱくさいって結論。
下をのぞけば、大声の主がベージュの靴下をまとった御足を上げてらっしゃる。
あれか。
寝起きで目が開かないんじゃない。 鋭いまなざしを送る日本人数名。

気を取り直して朝食は食堂車でとることに。
チケットを買って朝定食を。
緑豆入りのお粥や饅頭、たまごなどなど結構ボリューミー。

座席に帰ると、近くの席の中国人と会談中。
他のメンバーよりは少し中国語を経験してる私が、主に筆談で会話。
警察官(軍人?)の周さんと、麻酔医師の王さん。
とにかく、 「熱烈歓迎」 をノートに繰り返す熱き男、周さん。 謝々。
おだやかな時を過ごしてると、ふと周さんが自分のおじいさんは日本軍に殺された、と。
何も言葉を返せない私たち。
もし、私が中国語に堪能でも、何も言えなかった。
だまりこむ私たちに周さんは、笑顔を浮かべて、「我們朋友(ぼくたちは友達だよ)」 と言ってくれた。
訳してみんなに伝える。
安堵の笑顔がぎこちなく広がる。

私のおじいちゃんは戦時中、中国に出兵してた。
おばあちゃんは中国の病院で働いてた。

単なる昔話じゃないんだ。 今の私につながってんだ。
そして、海を二日間かけてやってきたこの地にもつながってる。
なんとなく、中国に来て後ろめたかったもの、避けようとしてたものが見えてしまって、
見ようとしてなかったから、
前に座ってる周さんと目が合わせられなくなる。
そんな私の心を察したか、周さんは駅で買った桃を洗ってきて、と三つ渡す。
一緒に食べた桃の味はおいしかった。
これから行く西の味がした。
「好吃、謝々(おいしいよ、ありがとう)。」 周さんはうなづいた。

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